一人で自分を育ててくれた母親が突然死んだ。
父親の記憶は4歳の頃から消えている。生活は困窮を極め、小学校の修学旅行にも行かなかった。中学生になっても、決して目立つこともせず、愛だの恋だのと騒ぐクラスメートをしり目に、ひっそりとやり過ごした。
高校生になると、すぐに引きこもりになった。そして、あの日がやってきた。7月初旬、家でゲームをしていると、電話が鳴った。
「お母さんが職場で倒れて、救急搬送されました」
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