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2018年5月30日水曜日

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2018年5月7日月曜日

神保町に新ブックセンター 岩波書店の本9千点、喫茶店と融合

 書店や喫茶店、イベントスペースなどがある「神保町ブックセンター with Iwanami Books」が4月、東京都千代田区にオープンした。閉店した「岩波ブックセンター」の跡地に開設。読書離れが進む中、本の街・神保町で人と書物をつなぐ機能が期待されている。
 開放的な空間の店内に入ると、右に喫茶店の厨房(ちゅうぼう)があり、正面にはソファや書架が広がる。書架にあるのは岩波書店の出版物のみ。新書や文庫から、全集まで約9千点が並ぶ。
 開業前日のイベントに登壇した岩波書店の岡本厚社長は「日本社会の知的基盤を提供してきた」と岩波創業からの100余年を振り返った。しかし、若年層を中心に教養離れは続いており、岩波を知の象徴とみなす往時の雰囲気は、ない。
 神保町の街並みも変わった。三省堂書店神保町本店の松下恒夫副本店長によると、チェーンの飲食店やドラッグストアが増え、「独自性がなくなりつつある」。古書店の中には神保町を倉庫として利用し、実店舗を構えない店もある。近くには大学も複数あるが、新年度などの教科書の購入が必要な時期以外で、大学生を見かける機会は少なくなったという。
 本や書店を取り巻く環境も厳しさを増している。出版科学研究所によると、書籍と雑誌をあわせた出版物推定販売金額は、1997年の約2兆6千億円から2017年は約1兆4千億円にまで減少。アルメディアの調べによると、書店数は昨年に1万2526店となり、00年に比べ4割以上減った。
 1981年からこの地にあった岩波ブックセンターは2016年に閉店。新ブックセンターはまちづくりなどを手がけてきたUDSが運営する。中川敬文社長は「岩波をハードルが高いとみなす人もいるし、若い人の多くは、認識さえしていない。接点を増やしていきたい」。独創性を生かした収益モデルを構築したり、新たな客層を生み出したりすることをめざし、イベントスペースも備える複合施設になった。
 中川社長は新ブックセンターの意義を、「シンプルな内装で本が引き立つようにした。それが最大のインテリアで、訴求力もある。岩波の知的なコンテンツと神保町という街を組み合わせ、本と人との交流拠点にしたい」と強調する。(岩田智博)

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2018年5月1日火曜日

「イオマンテ」

 アイヌの熊送りの儀式をめぐる絵物語。少年の家では、父親が仕留めた母熊の子どもを神として大事に育てるが、やがて別れの日がやってくる。詩的な文章と美しい絵が独特の世界をつくり、生命が軽視されることも多い今の時代に、「いのちのめぐみ」を受け取るとはどういうことかを伝えようとしている。(翻訳家 さくまゆみこ)
 ★寮美千子文、小林敏也画、ロクリン社、税抜き2000円、小学校低学年から

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2018年4月23日月曜日

「絵本作家になるには?」五味太郎さん、ベトナムで講演

 「きんぎょがにげた」「みんなうんち」などの作品で知られる絵本作家の五味太郎さん(72)が21日、ベトナム・ハノイで講演した。五味さんは現地在住の日本人やベトナム人のファンに向けて、「子どもも大人も、好きなものをいっぱい発見することは、人生で一番大事なこと。そのスタートの一つに絵本がなれたらいい」と語った。
 五味さんはこれまで約400冊の絵本を出版。作品は約30カ国で翻訳され、ベトナム語にも5作品が翻訳されている。
 講演で五味さんは、日本や韓国、中国などで、「教育」のために子どもに本を読ませようとする風潮が強まっていることに違和感を示し、「大人の仕事があるとすれば、いろんなタイプの本を作ってじっくり子どもの選択を待つことだ」と話した。ベトナムについては、「まだ絵本の黎明(れいめい)期で、そこに期待している」と述べ、新しい内容の絵本が生まれることや、普及の仕方への可能性に期待を込めた。
 五味さんは絵本を書くのは「自分のため」と述べ、それが結果的に子どもにも大人にも受け入れられてきたと話した。そのうえで、「今度うちへ遊びにいらっしゃい」とか、「暑いから帽子かぶんなさい、と小さな帽子が入っていたりする」という子どもからのファンレターの内容を紹介し、「好きな作品やそれを書いた人に親しみを感じるという感覚、心のやりとりが大事なことなのだと思う」と話した。
 また、どうすれば絵本作家になれるのかというベトナム人記者の質問には、「とにかくいっぱい書けることが大前提。膨大な『かく能力』がないといけない」とアドバイスした。
 講演会は日本の絵本をベトナム語に翻訳し、低価格で販売する活動を続けている広告・編集会社「MOREプロダクションベトナム」が、日系企業などの支援を受けて開いた。(ハノイ=鈴木暁子)

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私小説 [著]市川拓司

 数々の恋愛小説を生み出している著者は、2016年に刊行した『ぼくが発達障害だからできたこと』で自身について幼少期からの記憶をたどり考察した。今作はその「副読本」として、著者の一日の過ごし方を私小説と銘打ち描き出す。
 主人公の繊細な神経に驚く。食品添加物やカフェインの刺激で必ず起きる体調不良。肌着の締めつけは厳禁、匂いが体調に影響するので新しいパジャマをいつおろすかまで検討する。生活のすべての事柄にあらゆる吟味が必要なのだ。「ぼくの肉体や神経は油断ならぬ敵」という著者だが、自身の潔癖から生み出される純粋な物語は、暴力に満ちたこの世界とのバランスをとっているのだと語る。
 著者の見ている世界は澄んでいて、「発達障害」という言葉からは知り得ない豊かさがあった。 
(石原さくら)

私小説

著者:市川 拓司
出版社:朝日新聞出版

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真実 [著]梶芽衣子

 強い眼差しのモノクロームのカバー写真は、80年代に撮られたオフショットの一枚だという。
 映画「女囚さそり」で、セリフを発しなかった真意。かつての交際相手と交わした固い約束を守り続けた独身の生涯。女優・梶芽衣子が自ら記す数々の「真実」。
 夏目雅子の代表作「鬼龍院花子の生涯」。映画化決定の前、梶は自ら演じるために映画の企画を立て、東映に持ち込んでいたという驚きのエピソードも。“たられば”の話でしかないが、梶芽衣子版の鬼龍院花子、どのような表情を見せただろうか。
 歌手としても活躍、70歳を迎えてから、ロックを歌うようになり、こう記す。〈七十歳のロック、いいじゃない?〉
 タランティーノ監督も魅了したその「ロックな」空気は、時代を超え、響く。 
(太田サトル)

真実

著者:清水 まり、梶 芽衣子
出版社:文藝春秋

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言葉をリミックス、書いて解毒 町田康「湖畔の愛」

 神秘的な湖のほとりに立つ老舗ホテルを舞台にした町田康さんの小説『湖畔の愛』(新潮社)は、ボケと突っ込み満載の恋愛コメディーだ。「人間、つまり自分の考えていることがあまりに訳がわからないので書いている」という町田さんにきいた。

 本書は三つの短編連作集。意味不明な言葉を発する老人、天災級の雨女を愛した男、天才かもしれない芸人を擁する大学の演劇研究会一行――。ホテルという閉じられた空間に物語を背負った人々が集まる。
 「大好きな吉本新喜劇を意識してます」
 支配人の新町は真のホテルマンを目指しているが、つい妙な思考が漏れてしまう。到着客の名前がわからなかった瞬間、新町の頭の中で〈カッポーレカッポーレ〉と音が響く。〈音と文学の中間的なものに支配されるのは私の文学的悪癖。慌てて祓(はら)い清めて、にこやかに、「いらっしゃませ」 と言った〉
 建前と本音が入り交じった従業員らの掛け合い、作者の声がナレーションのように入るのも絶妙のノリだ。「コメディーは普通は人前では言わない、言っちゃおしまいのところをやる。書いててもスカッとするし、読んでてもスカッとする」
 最初の小説「くっすん大黒」(1996年発表)から、「階層や地域や時代をぐじゃぐじゃに混ぜる言葉のリミックスを試みている」。音楽的というより、音も含めていろんな角度から言葉を楽しむ。バンドのボーカルとして歌い、歌詞を書き、古典文学にも通じる町田さんだからこそ紡ぎ出せる文章がある。「日本語そのものが好きなんです。小説の言葉に音を取り戻したい。音に従属しすぎず、意味が勝ちすぎないよう、半々のバランスで」
 子どものころ、漫才師が昔の俳優をネタにしていて、知らないけれど、大人と一緒に笑った。「今、ナマで生まれている言葉、流通している言葉を取り入れたい。消えてなくなるような言葉も、のちのち、味わいになるかも」
 『告白』や『ホサナ』など長編では人の業という重いテーマを扱った。「人間の訳のわからなさという意味ではどの小説も同じ」という。「最もわからないことは、何故生まれて死ぬのかということ。意識が芽生えると死ぬのが怖くなる。意識を納得させるために宗教や政治などのフィクションが作られる。小説もその一つだが、解決のモデルはないし明晰(めいせき)でもない」
 「自分は普通だと思っている人は既存の物語に麻痺(まひ)し、自我というものに中毒しているのでは」と語る。そして、町田さん自身もそこから逃れているわけではない。書くことは、一瞬の解毒の繰り返しなのだ。とすれば、読書は、作家の解毒の過程をたどることでもある。
 「文章には本人がでる。何を考えているか、どういう価値観をもっているか。優劣じゃなく。自分を一回深くくぐってきた言葉だけで書いている小説は読んでて、一行一行、重い。自分はまだ、途中。もうちょっと頑張れば、自我という中毒から抜けられるかもしれない」(編集委員・吉村千彰)

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2018年4月18日水曜日

作家の加藤廣さん死去 「本能寺三部作」

 加藤廣さん(かとう・ひろし=作家)が7日、循環器不全で死去した。87歳だった。葬儀は近親者で営んだ。後日お別れの会を開く予定。喪主は妻玲子さん。
 中小企業金融公庫(現日本政策金融公庫)勤務などをへて、05年に「本能寺の変」を題材とした「信長の棺」でデビュー。「秀吉の枷(かせ)」「明智左馬助の恋」と続く「本能寺三部作」はベストセラーになった。

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2018年4月16日月曜日

上を向いてアルコール―「元アル中」コラムニストの告白 [著]小田嶋隆

「四〇で酒乱、五〇で人格崩壊、六〇で死にますよ」と医者から宣告を受けた著者は39歳から20年間断酒を続ける。なぜアルコール依存症になったのか、酒をやめるとはどういうことか。依存症からの生還を抱腹絶倒のエピソードを交えながらふり返る。
 アル中時代の惨状も読みどころだが、酒を断ったことでの生活や思考の変化に驚かされる。人間関係はもちろん、聴く音楽はレゲエからジャズになり、スポーツ観戦は野球がサッカーに。小屋を自作してイグアナまで飼い出す。
 酒を断ったことで「4LDKのなかの二部屋で暮らしているような、独特の寂しさ」があると語るが、デメリットはほとんどないとも。元依存症の著者が酒飲みの自己本位の主張や甘えを次々と切り捨てるさまは痛快でありながら、酒好きには耳が痛い。 (栗下直也)

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社畜上等!―会社で楽しく生きるには [著]常見陽平

 長年「働き方」というテーマに取り組んできた著者が、会社とうまく付き合うためのヒントを教えてくれる。
 目標は楽しく働くこと。著者はまず、会社とは何かを捉え直し、自分を見つめ直すことを勧める。そうすると、新しい見方を発見できるのだ。例えば、個人を縛る存在と否定していた会社が、安定と自由を同時に手に入れることができる場所として見えてくる。また、自分を萎縮させていた学歴コンプレックスが、妄想に過ぎなかったことに気付くことができる。このような気付きが、会社と私たちの関係を前向きにさせてくれることは間違いない。
 職場の嫌いな人との付き合い方、上司に不満がある時の対処法など、実際会社で起こり得る問題への助言も充実で、新社会人は無論、働き方を悩んでいる現役にもぜひ読んでほしい一冊だ。 (すんみ)

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家族社会学者・永田夏来 未婚時代の家族のかたち、探る

永田夏来さん (44歳)

 昨年8月に刊行した初の単著『生涯未婚時代』(イースト新書)で注目を集めた気鋭の家族社会学者。女性誌「Oggi」「VERY」でインタビューされ、インターネットテレビ「AbemaTV」のトーク番組「Wの悲喜劇」に出演するなど引っ張りだこだ。
 同書では1980年までは5%未満だった生涯未婚率が90年以降、急激に上昇し、2015年には男性が23%、女性が14%に達したと指摘。結婚によって成立する「家族」が、もはや賞味期限切れの存在になっていると喝破した。
 「高度成長期以降のこれまでの家族には幾層もの『○○すべき』が押しつけられてきました。婚姻届を出すべきで同居すべきで、家事・育児などのケア労働をし、セックスを伴う愛情も持つべきだと。でも、低成長時代になり、家計を支えた終身雇用も崩壊しており、家族も変わらざるを得ません」
 同書でも触れたが、例えばシェアハウスでの共同生活が、従来の家族が担ってきた家事・育児や精神の安定を支える機能などを持つとみる。
 ただ、家族へのアンチテーゼとして「非婚」を主張する論調とは距離をとり、同書でも「未婚」という言葉を使った。「『一生涯結婚しない』とまで、婚姻制度と闘うのはなぜ?というのが最近の『女子』の感覚」と話す。
 背景には自身の経験もある。団塊ジュニア世代で、就職氷河期を経験。早大大学院で博士号取得という高学歴だが、兵庫教育大講師という安定した職に就いたのは今春。約2年前は過労で倒れ、入院の手続きなどで「法律婚」をしていない弱さを実感した。
 一方で、京都のシェアハウスで6人の共同生活をした経験もある。シェアハウスでは家賃の安い人が料理や掃除をし、共に食卓も囲んだ。従来型の家族と新しい共同体の「いいとこ取り」が、低成長時代に「よりしぶとく生き残るためには必要」と話す。
 同書では戦後日本は「社会が負担するべき福祉のコストを家族に肩代わりさせてきた」として社会制度の見直しの必要性にも言及。「未婚」の人が生きやすい社会にすれば、シングルマザーへの支援にもつながるなど、より多くの人が産みやすくなり、少子化対策にも有効とみる。
 「当事者の生活感覚に寄り添ったリアリティーのある研究をしていきたい」。カギは「共感」だ。同書刊行後も若い世代からの熱い反応に手応えを感じている。(赤田康和)

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2018年4月9日月曜日

津村記久子「ディス・イズ・ザ・デイ」終了 6月に出版

津村記久子さん

 昨年1月にスタートした津村記久子さんの夕刊連載小説「ディス・イズ・ザ・デイ」が、今年3月30日付で終了した。

 プロサッカー2部リーグのチームを応援する人々の悲喜こもごもを、連作短編の形で描いた物語。弘前、川越、高知など全国の町を拠点とする架空の22チームと、それぞれのチームを応援する22人が、シーズン最後の試合に臨むまでを描いた。

 津村さんは執筆にあたり、スタジアムでの観戦と物語の舞台のロケーションで全国各地を訪ねた。「南は鹿児島から、北は遠野まで行きました。さまざまな土地の人の実感や思いやりを知り、日本が好きになりました」と話す。

 6月に朝日新聞出版から単行本が刊行される。新聞連載でも挿絵を担当した内巻敦子さんのイラストが、単行本でも作品の世界を彩る予定だ。
 (柏崎歓)

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ラブという薬 [著]いとうせいこう、星野概念

 いとうせいこうと精神科の主治医・星野概念の、ふだんの診療の様子を、対談というかたちでまとめた「読む薬」。
 主治医であるが、いとうが所属するバンドのサポートメンバーでもある星野との関係性による絶妙な距離感が生み出す「ゆるさ」。そのゆるさのせいか、もともと個人的な悩みに関するカウンセリングのはずなのに、自分の心の中のトゲトゲが、少しずつ取れていく感覚に。これが「ラブ」の効能だろうか。
 本書中でいとうは、「傾聴って愛だよなと思った」と語っている。自分の話を人に聞いてもらう、それが愛される(ラブ)ということだ。
〈怪我なら外科、辛い気持ちなら精神科〉。そんなシンプルな感覚で精神科を訪れてみてもいい。たぶん、そこには「ラブ」があるから。 (太田サトル)

ラブという薬

著者:いとう せいこう、星野 概念
出版社:リトル・モア

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新委員8人、読書面の掲載は土曜日に

 今年度から読書面の掲載が土曜日になります。
 新しく8人の書評委員を迎え(左欄参照)、多彩な書評を掲載してまいります。紙面の新企画は、著名人がおすすめの1冊を紹介する「私の好きな文庫・新書」(毎月第1週)。ビジュアル系の書籍を紹介する「みる」欄も随時掲載します。「文庫この新刊!」は、週替わりの筆者はそのまま、場所を移してパワーアップしています。読書を楽しむ手がかりとして、引き続きご愛読いただければと思います。

 ■書評委員
 (敬称略、★印は新任)
 柄谷行人(哲学者)▽斎藤美奈子(文芸評論家)▽齋藤純一(早稲田大学教授・政治学)▽佐伯一麦(作家)▽椹木野衣(美術批評家・多摩美術大学教授)▽サンキュータツオ(学者芸人)★寺尾紗穂(音楽家・エッセイスト)★出口治明(立命館アジア太平洋大学学長)★都甲幸治(早稲田大学教授・アメリカ文学)★西崎文子(東京大学教授・アメリカ政治外交史)▽野矢茂樹(立正大学教授・哲学)★長谷川眞理子(総合研究大学院大学学長・人類学)▽保阪正康(ノンフィクション作家)★間宮陽介(青山学院大学特任教授・社会経済学)▽宮田珠己(エッセイスト)★諸田玲子(作家)▽山室恭子(東京工業大学教授・歴史学)▽横尾忠則(美術家)★石川尚文(本社論説委員)

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2018年4月4日水曜日

笹井一個さん死去 数々の装画を手がける

 笹井一個さん(ささい・いっこ=イラストレーター)が3月20日、大腸がんで死去した。42歳だった。葬儀は近親者で行った。
 佐藤友哉さんの「鏡家サーガ」や、辻村深月さんの「きのうの影踏み」といった小説などの装画を手がけた。

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2018年4月3日火曜日

「たんじょう会はきょうりゅうをよんで」

 今年の誕生会は「ほんかくてき」にしよう! 準備も完璧。なのに招待していないきょうりゅうがやってきた。予想外のお客様、どんな風にお相手をするのかな? 「ほんかくてき」を実行するため、背伸びをしたいぼくときょうりゅうが精いっぱい礼儀正しく振る舞うやりとりと、小さな友情が芽生える様がかわいい。(丸善丸の内本店児童書担当 兼森理恵)
 ★如月かずさ作、石井聖岳絵、講談社、税抜き1200円、小学校低学年から

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「ヒトラーと暮らした少年」

 実在した人物ヒトラーが登場するこの物語には独特な緊張感が漂い、知らないうちに大きな力に巻き込まれていくことの恐ろしさが伝わってくる。主人公のピエロはフランスの孤児院で暮らしていたがドイツの山荘で働く叔母にひきとられ、そこでヒトラーと会う。周りに感化されながら変わっていく少年に心が痛む。(ちいさいおうち書店店長 越高一夫)
 ★J・ボイン著、原田勝訳、あすなろ書房、税抜き1500円、中学生から

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多様性の本質、彩り豊かに

■「マルコとパパ ダウン症のあるむすこと ぼくのスケッチブック」
 「絵ならやぶりすてられる。消して、もういちどかきなおしてもいい」「だけど、子どもは……」。作者の胸の内が吐露されるショッキングな冒頭。グスティは、アルゼンチン出身の国際的に活躍する人気絵本作家だ。ダウン症のある息子マルコの誕生を最初は「うけいれられなかった」という。
 父の目で描く心の画帳。悶々(もんもん)とコミカルな自問自答、包容力のある妻や核心をつく幼い長男テオの言葉、マルコと遊びながら発見を繰り返すいとしい毎日が、彩り豊かに描かれる。
 自由で巧みなデッサン、誠実でユーモラスな表現。眺めて読んで多様性の本質を味わう。大人のひとりごとにせず子どもと共有できる、訳語の選択や文字のバランスの配慮がにくい。(絵本評論家・作家 広松由希子)
 ★グスティ作・絵、宇野和美訳、偕成社、税抜き2800円、小学校中学年から

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2018年4月2日月曜日

歌舞伎町の混沌を生きて 馳星周「不夜城」

馳星周さん=長野県軽井沢町、村上健撮影

 歌舞伎町、最初は怖かったですよ。大学入って上京して、ゴールデン街でアルバイトしたのが1980年代、バブル前夜からですね。パンツ一枚の男が屋根の上逃げてたり、誰かが路地で血吐いてぶっ倒れてたり、なんだここはって初めは思ったけど、でもすぐ慣れた。

 むちゃくちゃで混沌(こんとん)としてたけど、楽しかった。無秩序の楽しさでしょうね。なんだかんだ言っても、日常生活では秩序のなかで暮らしてるわけじゃないですか。銀座とか六本木と違って、歌舞伎町は無秩序で猥雑(わいざつ)で、そこに身を置いてるのが楽しくてしょうがなかった。

 作家デビューの前はライターやってたんですけど、バブル崩壊のあおりとかそういうことなのか、年収の半分くらい稼がせてもらってた雑誌がつぶれちゃって。また営業して回るのも面倒くさいし、でもものを書く仕事しか自分はできないっていう自覚はあったので、じゃあ一度本気になって小説書いてみようかと。それが『不夜城』です。

 当時はバブルが崩壊して、経済どころか、この先どうなるんだよ日本はっていう空気が蔓延(まんえん)してる頃でした。でも中国とか東南アジアの人たちから見ればまだまだ天国のような国だったわけで、歌舞伎町なんかにはどんどん外国人が入ってくる。不法滞在して、裏社会に行く人だっている。そんな状況を背景にして書いたんです。

 毎日のように歌舞伎町で飲んだくれてたから、街の空気が変わったのはわかりました。もちろん僕が行くような安酒場は変わらないですよ、バブルの頃もバブル終わってからも。でも、街のなかで外国語がやたらと多く聞こえるようになって。タクシーチケット使って夜通し遊んでたサラリーマンが終電で帰るようになって、その時間を過ぎると本当に無国籍地帯みたいになったのを覚えてます。

 どう書いたらいいんだろうとか、そういう迷いはなかった。それまで腐るほど小説読んで、それが血肉になっていたんだろうし、既存の作家に対して持っていた不満を全部解消するものを書いてやろうとか、そういう大それた気持ちもありました。

 でもいきなりベストセラーになったのはもう、うっそーって感じ。ひとごとでしたね。書いたものに自信はあったから、一部ではいい評価を得られるだろうと思ってたけど、日本の読者があれだけ受け入れてくれるとは思っていなかったので。

 主人公に共感できない小説とも言われたけど、共感できないかなって僕は逆に不思議に思ってました。いわゆるノワールと呼ばれる小説は、当時日本にはなかったけど、海外にはすでにあった。それまでのハードボイルドとか冒険小説とかの書き方じゃなくても、読者の共感を得ることはできるし、逆にこういう物語のほうが、深い絶望とか、大げさに言えば生きてることの哀(かな)しみとかは、伝えられると思っていたので。

 当時は希望なんて信じていませんでした。30代の頃の僕は生意気でしたね。人はみな一人で生きて一人で死ぬんだと思ってたから、小説もそういうものを書いていた。でも今は、希望というものを信じてるんですよ。希望がないと人は生きていけないと思うようになった。年とったからなのかな。

 2010年から登山を始めたんだけど、一緒に山に登る相手とは、お互いに命を預け合ってる感覚があるんですよ。一緒に行ってくれる相手がいるってことは、希望だと思う。(最新作の)『蒼(あお)き山嶺(さんれい)』では、命を預け合った絆みたいなものを書きたかったということもあるんです。努力すれば報われるとか、そういう安易な希望は、もちろん、今でもすごく嫌だけど。

 歌舞伎町のあたりには、全然行かなくなりましたね。06年に軽井沢に越してきて、今は東京に行くこと自体がそんなにないので。コマ劇場がなくなるってニュースで聞いたのは何年前だっけ、あれはちょっとショックだった。歌舞伎町からコマなくしちゃだめでしょって思ったけど、でもやっぱり、変わっていくんだよな。(聞き手・柏崎歓)

    ◇
 はせ・せいしゅう 1965年北海道生まれ。編集者やフリーライターを経て、『不夜城』(96年)で小説家デビュー。この作品で吉川英治文学新人賞を受け、『鎮魂歌 不夜城2』(97年)で日本推理作家協会賞、『漂流街』(98年)で大藪春彦賞を受賞。最新刊は『蒼き山嶺』(光文社)。

 ■「不夜城」(1996年)
 新宿の歓楽街、歌舞伎町の裏社会が物語の舞台。
 台湾人の父親と日本人の母親の間に生まれた劉健一は、中国人マフィアたちがしのぎを削る裏社会を巧みに生き抜いてきた。ところがかつて相棒だった呉富春が上海マフィアの大物にたてついたことがきっかけで、自らも窮地に追いこまれる。
 中国マフィア同士の複雑な駆け引きとだまし合い、そして孤独な日々を生きる主人公の卑屈で卑劣な人物造形が鮮烈な印象を残し、デビュー作ながら累計125万部のベストセラーに。金城武主演の映画も話題になった。

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2018年3月29日木曜日

アンデルセン賞に「魔女の宅急便」の角野栄子さん

 「魔女の宅急便」などで知られる児童文学作家の角野栄子さん(83)が26日、児童文学のノーベル賞といわれる「国際アンデルセン賞」の作家賞に選ばれた。国際児童図書評議会(IBBY、本部・スイス)が、イタリア北部ボローニャで開いている児童書フェアで発表した。
 日本人の作家賞受賞は、まど・みちおさん、上橋菜穂子さんに次いで3人目となる。
 角野さんは早稲田大学卒。20代で移民としてブラジルにわたった。2年後に帰国し、ブラジルでの体験談をまとめた「ルイジンニョ少年」で作家デビューした。
 ユーモアを巧みに織り交ぜた作風が愛され、おばけや怪獣が主人公として登場する作品を多く描いている。代表作「魔女の宅急便」(1985年)は、魔女キキがひとり立ちの旅に出かけ、ほうきで空を飛ぶ魔法を使って、見知らぬ町で成長していく物語。89年には宮崎駿監督がアニメ映画化して大ヒットした。IBBYは「多感な時期の少女の感情を描いたとても親しみやすい作品だ」と評価した。
 角野さんは朝日新聞の電話取材に「キキのような少女は、子どもから大人への境目で不安定だが、精神的に成長する時期。この世代の子どもを書くと心がわかり合えるような気がして、とても楽しんで書いた。一人ひとりが自由に読んで、読んだ人それぞれの物語として楽しんでほしい」と話した。
 角野さんのほかの作品に、アッチ、コッチ、ソッチの3人の愉快なおばけが活躍する「小さなおばけ」シリーズ、「大どろぼうブラブラ氏」「ズボン船長さんの話」などがある。(伊藤舞虹、ボローニャ=河原田慎一)

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